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大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)1120号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕別紙目録記載の(イ)(ロ)(ハ)の土地は原告の所有であるところ、原告は右(イ)(ロ)の土地を従前から被告本多ミツエに、右(ハ)の土地を従前から被告高塚武にそれぞれ賃貸していること、原告と被告本多ミツエとの間において合意で昭和三七年一二月一九日右(イ)の土地の賃料を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金三六〇円に、右(ロ)の土地の賃料を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四〇〇円に改定したこと、原告と被告高塚武との間において合意で昭和三六年四月七日右(ハ)の土地の賃料を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四〇〇円に改定したこと、原告が昭和三九年九月中に被告本多ミツエに対し右(イ)の土地の賃料については3.3平方米(1坪)当り一ケ月金七二〇円に、右(ロ)の土地の賃料については3.3平方米(1坪)当り一ケ月金八〇〇円に増額する旨の意思表示をしたこと、原告が昭和三九年九月中に被告高塚武に対し右(ハ)の土地の賃料を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金八〇〇円に増額する旨の意思表示をしたことは当事者間に争がない。

そこで、原告主張の如き増額請求をなし得べき法定要件の存否につき判断する。<証拠>によると、別紙目録記載の(イ)(ロ)(ハ)の土地の土地課税台帳に記載されている土地価格は昭和三六年度は金四、二二四、五〇〇円、昭和三七年度は金四、二二四、五〇〇円、昭和三九年度は金二五、〇二六、〇〇〇円にして、その課税標準額は昭和三九年度は金五、〇六九、四〇〇円であること、その固定資産税と都市計画税の合計は、昭和三六年度は金六七、五八〇円(3.3平方米当り金四四〇円)、昭和三七年度は前記昭和三六年度と同一、昭和三九年度は金八、一一〇〇円(3.3平方米当り金五二八円)であること、鑑定人Nの鑑定の結果によると、底地価格(賃借権の価格を控除したもの)を更地価格の四〇%として右各土地の3.3平方米(1坪)当りの底地価格が(イ)の土地につき昭和三七年一二月現在金八七、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在九三、〇〇〇円、(ロ)の土地につき昭和三七年一二月現在金一〇五、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在金一一二、〇〇〇円、(ハ)の土地につき昭和三六年四月現在金一〇四、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在金一二九、〇〇〇円即ちこれを更地価格に換算すれば、右(イ)の土地は昭和三七年一二月現在金二一七、五〇〇円、昭和三九年一〇月現在金二三二、五〇〇円、右(ロ)の土地は昭和三七年一二月現在金二六二、五〇〇円、昭和三九年一〇月現在金二八〇、〇〇〇円、右(ハ)の土地は昭和三六年四月現在金二六〇、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在金三二二、五〇〇円と鑑定していること、鑑定人Kの鑑定の結果によると、3.3平方米(1坪)当り更地価格は右(イ)(ロ)の土地につき昭和三七年一二月現在金二五八、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在金三二四、〇〇〇円、右(ハ)の土地につき昭和三六年四月現在金二四〇、〇〇〇円、昭和三九年一〇月現在金四〇四、八〇〇円と鑑定していることが認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、右土地の公租公課については昭和三九年度は昭和三六年度、昭和三七年度より二〇%、右土地の地価については昭和三九年一〇月現在で、昭和三六年四月現在より右(ハ)の土地は二四%ないし六八%、昭和三七年一二月現在より右(イ)(ロ)の土地は七%ないし二六%の上昇があつたこととなる。なお証人Tの証言によると、右土地の西側に位置する同所三七番地の内一三二平方米(四〇坪)を同証人が訴外株式会社西宗商店に賃貸しているところ、その地代は昭和三八年三月までは月額金二〇、〇〇〇円であつたが、同年四月から月額金三〇、〇〇〇円に値上げしたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。されば前記各賃料の改定より右(イ)(ロ)の土地については約一年九カ月、右(ハ)の土地については約三年五カ月を経過した昭和三九年九月の前記原告の増額、請求は特段の事情なき限り地代増額の法定要件を具備しているものと認めるべきである。

被告らはいずれも前記昭和三六年と昭和三七年の賃料改定に際しては、当時すでに本件各土地の価格が騰貴の傾向にあつたので、これを考慮し、一〇年先を見越して近隣の地代よりも高く前記賃料改定に応じたのであるから、それより三年ないし四年位しか経過していないので、右賃料の増額請求をすることができないと主張するので判断するに、被告らの右主張を認めるに足る証拠なく、却つて<証拠>によると、原告と被告高塚武との間において昭和三六年四月七日右(ハ)の土地の賃料をを3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四〇〇円と合意した際に作成された公正証書第三条には「本契約の賃料は比隣の賃料土地の価格公租公課の増加其他一般経済界の変動等に因り不相当となつたときは双方合意の上増減することができるものとする。」と明記されており、又原告と被告本多ミツエとの間において昭和三七年一二月一九日右(イ)(ロ)の土地の賃料を3.3平方米(1坪)当り一ケ月金三六〇円および金四〇〇円と合意した際に作成された調停調書の調停条項第三条但書には「原告が隣地の地代の値上を請求したときは、之に応じて被告本多ミツエに対しても地代の値上を請求することができるものとする。」と明記されており、右公正証書作成の際には、原告が昭和三五年中に訴外佃土地株式会社に本件土地の地代を鑑定させると、3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四九一円であつたので、これを基礎にして右(ハ)の土地の賃料を前記のとおり金四〇〇円と定めたこと、右調停に際しては被告高塚の右(ハ)の借地と並んだ場所にある土地であることと、右(ロ)の土地が道路に面する部分が少ないことを考慮して、右(ハ)の賃料に準じて前記のとおり金三六〇円、金四〇〇円とそれぞれ定めたこと、右賃料の改定にはいずれも将来の地価、地代の高騰を予測して特に高く定めたというようなことがないことが認められる。然らば、前記原告の被告らに対する増額請求を阻止すべき特段の事情の認められない本件においては、原告の被告らに対する前記増額請求によつて右(イ)(ロ)(ハ)の各地代は適法に増額されたものというべきである。そこで、以下増額された本件各賃料について判断することとする。およそ、賃貸借継続中の適正賃料の算出は、更地価格から賃貸権の価格を控除した価格に地主の利潤率たる年六分の率を乗じ、その積に固定資産税等の諸税を加算して算出したものより、当該賃貸借に認められる特殊事情があれば、これをその消極的因子として考慮した上定めるべきものと解するを相当とするので、これを本件につき考えてみることとする。鑑定人Nの鑑定の結果および鑑定人Kの鑑定資料の一部によれば、昭和三九年一〇月現在において3.3平方米(1坪)当りの底地価格(更地価格より賃借権の価格を控除したもの)は、右(イ)の土地が金九三、〇〇〇円、右(ロ)の土地が金一一二、〇〇〇円、右(ハ)の土地が金一二九、〇〇〇円であること、および昭和三九年度の右各土地の固定資産税と都市計画税の合計が3.3平方米(1坪)当り金五二八円であることが認められ、右認定に反する鑑定人Kの右地価に関する部分の鑑定の結果は、前記鑑定人Nの鑑定の結果に徴し相当と認め難いので採用し得ず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。そこで、右認定の底地価格と諸税を前記適正賃料算出の計算方法(但し特殊事情を考慮せずに)あてはめて算出すると、右(イ)の土地の3.3平方米(1坪)当りの一ケ月の賃料は金五〇九円、右(ロ)の同様の賃料は金六〇四円、右(ハ)の同様の賃料は金六八九円となる。次に、特殊事情の存否につき考えることとする。鑑定人Nの鑑定の結果および鑑定人Kの鑑定資料の一部によると、昭和三六年四月現在で右(ハ)の土地の底地価格は3.3平方米(一部)当り金一〇四、〇〇〇円、同年度の固定資産税と都市計画税の合計が3.3平方米(1坪)当り金四四〇円、昭和三七年一二月現在で右(イ)の土地の底地価格は3.3平方米(1坪)当り金八七、〇〇〇円、同年度の右同様の諸税の合計が3.3平方米(1坪)当り金四四〇円、同日現在で右(ロ)の土地の底地価格が3.3平方米(1坪)当り金一〇五、〇〇〇円、同年度の右同様の諸税の合計が3.3平方米(1坪)当り金四四〇円であることが認められ、右認定を左右するに足る証拠がない。右数値をもとに前記適正賃料算出の計算方法で算出すると、昭和三六年四月現在で右(ハ)の土地の3.3平方米(1坪)当り一ケ月の賃料は金五五六円に、昭和三七年一二月現在で、右(イ)の土地の同様の賃料は金四七一円に、右(ロ)の土地の同様の賃料は金五六一円になる。しかるに、前記の如く右(イ)の土地については金三六〇円、右(ロ)(ハ)の土地については各金四〇〇円といずれも当事者間の合意でこれを改定していたのである。しかもその改定の際、前認定の如く原告において当時鑑定させた結果適正賃料としてでていた3.3平方米(1坪)当り一ケ月金四九一円を基礎として右の如く合意改定したのである。即ち本件各土地の賃料は従前より当事者間ではいずれも客観的適正賃料より低額に定められてきていたものというべく、これは本件各土地の賃料を定めるにつき、消極的因子たる特殊事情として考慮すべきである。そこで、右消極的因子並びに前記証人今井兼武の証言により認められる右各賃料改訂時の諸事情等を前記昭和三九年一〇月現在における客観的適正賃料に参酌して、右各土地の賃料を算出すると、3.3平方米(1坪)当り一ケ月の賃料は、右(イ)の土地につき、金四五〇円、右(ロ)(ハ)の土地につき各金五〇〇円とするを相当と認める、右認定に反する鑑定人N、同Kの各鑑定の結果はいずれもその算出方法が当裁判所の前記算出方法と相違するので採用することができない。(秋山正雄)

別紙目録

大阪市南区安堂寺橋通一丁目三八番地

宅地一五三坪四合四勺(506.35平方米)の内

(イ)六五坪(214.5平方米)(但し別紙図面(イ)の部分)

(ロ)四〇坪(一三二平方米)(但し別紙図面(ロ)の部分)

(ハ)四八坪(158.4平方米)(但し別紙図面(ハ)の部分)

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